航空救難団モデルのスケッチ公開に際して
前回は、航空救難団モデルの開発をスタートする経緯についてご説明しました。(詳しくはコチラをご覧ください)
今回は開発スケッチをご覧いただきながら、航空救難団モデルのデザインや機能が開発を進める中でどのように変化、進化していったのかをご説明したいと思います。
私たちの作る時計のデザインや機能には、そうあるべき理由が必ずあります。その決定まで、悩み、迷いながら進めていくのですが、そういった過程も含めてJSDFファンの皆様と共有できれば幸いです。
製作背景
救難活動における最後の砦と称される、航空自衛隊所属の”航空救難団”(通称Air Rescue Wing)。災害派遣や、民間では対応が困難な海難・山岳救助など、その活動フィールドは常に過酷を極めます。
メディックと呼ばれる救難員達は、選び抜かれた民生品の救難器材を貸与されています。潜水時の専用器材としてダイビングコンピュータは貸与されていますが、腕時計は専用の貸与品がなく、自費にて民生品を購入していました。
日々の潜水訓練や、落下傘降下時の衝撃など、過酷な任務に耐える防水性や堅牢性を持った時計は高価になりがちな一方、不要な機能も多いなどの意見があることを、メディックへのインタビューで知ることができました。
デザインが出来上がるまで
初期段階
メディック達が乗り込む救難ヘリであるブラックホーク(UH-60J)をイメージしたオールブラックの外装に、幾何学的に最も強い構造とされるヘキサゴン(6角形)メッシュの文字盤デザインを組み合わせ、救難団に相応しい意匠イメージを形にしていきました。
この段階では、まだメディック達からのヒアリングを行っていないため、実使用に関わる機性はまだ考慮されていませんでした。(ベゼルは通常の60分計目盛りで、防水性も10気圧防水、インデックスも通常蓄光)
中期段階
防衛省本部、航空自衛隊幕僚監部にヒアリングを実施して修正をかけていきました。
メディックが被救助者の容態を即座に判断できるように、回転ベゼルには医療用のナースウォッチにも採用されるパルスメーター(脈拍計)を印字しました。
また文字盤には専用モデルの証として部隊標識をプリントするとともに、裏蓋側には航空救難団のスローガンである「That Others May Live -他を生かすために-」の言葉と、部隊を構成するU-125A(捜索機)、UH-60J(救難機)、CH-47J(輸送機)の3機の航空機をデザインしました。
最終段階
救難団総司令部のある入間基地にて、複数回にわたるメディック達からのヒアリングを実施。
夜間における長時間の外洋救難時にも、視認性が確保できるよう、文字盤4箇所と時分針には、自家発光するトリチウムマイクロカプセルを埋め込みました。
また、日々の潜水訓練や海上救難時を想定し、ねじ込み式シューズでの200M防水に防水性を強化しました。
また文字盤の部隊標識は広報用のライトブルーカラーでは任務で目立ち過ぎてしまうというメディックの声をもとに、着用する迷彩服に貼られている実際のワッペンカラーに変更しました。
次回は、いよいよ航空救難団モデルの画像を公開します。7月18日に公開予定ですので、お楽しみに!