国産時計メーカーケンテックスの時計づくり
現在では、国産時計メーカーとして確固たるポジションを築いたケンテックスですが、これまでの歩みは平たんではありませんでした。今では国産腕時計に主軸を移し展開していますが、最初から日本製にこだわっているわけではなかったのです。当初はスイス製ムーブメントを使用したり海外で生産を行うなど様々なチャレンジを行ってきましたが、品質にこだわり続けた結果、日本で時計を作るという結論に至ったのです。日本の時計ブランドとして歩むケンテックスの、こだわり、大切にしている想いをご紹介いたします。
創業のポリシー「高品質な時計を適正な価格で」
ケンテックスは、橋本憲治が日本人の繊細な感性に合った高品質な時計を適正価格で提供することをポリシーとして立ち上げたブランドです。 それは、時計を高級品として扱いマーケティングに力を入れる、スイスを中心としたラグジュアリーブランドへのアンチテーゼでありました。 当初はスイス製ムーブメントを採用したり、海外生産を行うなど様々なチャレンジを行いました。20年以上におよぶ試行錯誤の結果、高品質と適正価格の実現は、国産ムーブメントを使い日本で生産する純国産腕時計という結論に到達します。橋本憲治はケンテックスを日本の時計ブランドとすることを決意し、ムーブメントを国産ムーブメントに切り替えました。
創業者の橋本憲治。「日本人の繊細な感性に合った高品質な時計を適正価格で提供する」という彼のコンセプトは全社員に行き渡っています。
高機能と抑制のきいた上品なデザイン。日本人に合う時計を作りたいという想いが込められたESPYシリーズ。
国際規格「ISO6425」に適合する本格ダイバーウォッチでありながら、優美なケースラインを持つマリンマン シーホース。この手首になじむデザインこそが、橋本憲治が常にこだわるポイントです。
現役のパイロットの厳しい要求に応えて開発した回転計算尺。ベゼルに刻まれた数字は単なるデザインではありません。実用にこだわるケンテックスらしいモデル。
自衛隊の隊員へのリスペクトから生まれたJSDFシリーズ
2001年から続く日本製ミリタリーウォッチ JSDFシリーズ。私たちはJSDFシリーズを単なる日本のミリタリーウォッチと捉えていません。それは自衛隊が単なる軍隊ではないからです。他国を侵略せず、日本の平和と安全を守り、「専守防衛」という規律を持つ組織、その崇高な理念へのリスペクトが私たちの開発の原動力です。そのこだわりはJSDFシリーズに、自衛隊の魂を吹き込むことに注がれます。1モデル1モデル、自衛隊員の声に耳を傾け、日本製の、自衛隊のミリタリーウォッチを開発してきました。本物であることの頑なな追求は、防衛省との契約、正式ロゴの提供を受けるなどの信用を獲得しました。 隊員との交流を通じて時計を作り上げるそのスタイルは時計の開発という点では異色でさえありますが、それがJSDFシリーズの開発のポリシーなのです。
本物であることへのこだわりは、ダイヤルの迷彩模様にも表れます。自衛隊の迷彩の忠実な再現は、防衛省本部契約商品として自衛隊とコラボレーションすることで実現しました。
JSDFのロゴマークは、自衛隊から正式に提供をうけたもの。ここにもこだわりが見えます。
チタンのケース、バンド全てをブルーIPコーティングを施したスペシャルモデル。他の時計にはない異形ともいえる迫力があります。1996個の限定販売で、もうケンテックスに在庫はありません。
トライフォースのデザインスケッチ。自衛隊という存在を意匠におとしこもうと、苦闘している様子が見て取れます。
品質へのこだわり、新たなチャレンジ
現在のケンテックスを牽引するのは、創業者橋本憲治の息子でありケンテックスジャパンの社長、開発総責任者の橋本直樹です。幼いころから父親の背中を見て育った直樹は、いい意味でも悪い意味でも、まったく妥協を知らないまっすぐな性格。その情熱は、本物の時計を作ること、日本のモノ作りの力を結集することに向けられています。彼が初めて開発の指揮をとった新クラフツマンでは、その妥協のなさ、過酷な技術的要求から、何度も生産側とぶつかり、その進行が危ぶまれました。2014年末の発売開始までは綱渡り状態で、ぎりぎりのところで予約をいただいたお客様への発送が間に合うこととなりました。 彼がこだわったのは、新クラフツマンをケンテックスのフラッグシップとして、デザイン、加工技術、組み立て技術を高いレベルで融合することであり、そのためにケンテックスの持てる技術をぎりぎりまで発揮させることでした。
現在のケンテックスを強力に牽引する橋本直樹。さらなる品質向上へのチャレンジと、日本の時計産業、日本のモノ作りの未来を担う若い力。
異素材の組み合わせが生み出す質感、機能性と立体デザインの融合を、とことんまでこだわった新クラフツマン。ケンテックスとしては高価格ですが、同価格帯で同様の機能を実現した機械式時計は他にはありません。
機能の追求は、耐磁性能にも及びます。JEMIC(日本電気計器検定所)で耐磁試験を行った結果、JISの定める強化耐磁性能の4倍以上(64,000A/m以上)もの耐磁性が証明されました。
そのこだわりは裏スケルトンにも及びます。耐磁性能の犠牲となったシースルーを補うべく、日本の彫師によるエングレービングを取り入れました。機能性だけではない、時計を持つ喜びを追求したものです。
日本製にこだわる ケンテックスのモノ作り
ケンテックスの時計は、企画、設計から組み立てまで、すべて日本で行われています。加工精度を高め、高品質を維持するためには、熟練した技術が必要だからです。市場的にはヨーロッパ製腕時計に押され気味の時計業界ではありますが、日本の高い技術力、品質を知っていただきたいのです。そして、ケンテックスの腕時計に触れていただくことで日本のモノ作りの力が伝わり得るなら、これに勝る喜びはありません。
企画段階のスケッチ。スケッチを何枚もおこし、レビューを繰り返しながら企画を固めていきます。
ある程度企画が固まると、CADスケッチの段階に進みます。ここまで来ると、設計も大詰めです。
日本国内工場で、一品一品丁寧に組み立てていきます。
時計が組み上がると、検査を受けます。この検査こそが、日本製の腕時計の品質を支える重要な工程となります。