T-4ブルーを腕に!クオーツモデルスケッチ公開
2019.10.18 UP

第1話では、これまでのブルーインパルスの歩みを機体の変遷とともにお伝えしてきました。今回60周年記念モデルの製作では、自衛隊時計としての実用性と耐久品質を兼ね備えつつ、ブルーインパルスの純粋な格好良さ、そして60周年に相応しいメモリアルな要素を、いかに小さな腕時計という世界に落とし込むかが開発のポイントでした。

ブルーインパルスは、自衛隊を代表する空自のアクロバット飛行部隊です。
その記念モデルと言うからには、「パイロットウォッチの日本代表」くらいの気概と誇りを胸に開発を進めてきました。

今回の開発では、現場の隊員も使用しやすい精度に優れるクオーツ式と、記念モデルに相応しい、一生ものの機械式の両モデルについて防衛省の製作許可をいただけたこともあり、満を持して両モデルの製作が決定したのでした。

第2話では、まずクオーツ式モデルのスケッチとともに、その魅力について解説していきます。



■戦闘機にも使用されるチタンを全外装に採用

外装は、軽さと強さの両方に優れた金属である“チタン”をケースとベルトの両方に採用する予定です。チタンは、比重は鉄の約半分でありながら、強さは鋼に匹敵する強度を持ち、戦闘機の機体やエンジンにも多用される先進素材です。また他の金属と比べてアレルギーなどの生体毒性がとても低く、腕時計には最高の素材といえます。

T-4の機体にも使用されているチタン

T-4の機体にも使用されているチタン (画像:航空幕僚監部提供)

フライトコンピューター

フライトコンピューター(画像:Wikipediaより転載)

さらにチタン製のベゼルにはフライトコンピュータとして使用できる精密な回転計算尺が搭載される予定です。万が一、計器故障等により推測航法となっても、パイロットはこの時計を使って速度、距離、時間、燃料を素早く計算することが可能となります。自衛隊時計の点からも、ベースはあくまで航空パイロットのプロユースに応える専用設計が重要となります。

■ブルーの精髄を極めたデザインコンセプト

本モデルでは、仕様面でのパイロットウォッチとしての実用性だけに留まらず、ブルーインパルスならではの意匠性さやその世界観、そして部隊特有のバックストーリーなどを随所に散りばめた、まさに60周年を語るに相応しいブルーインパルスウォッチの完成形を目指しました。

8ヶ月以上に渡り練り上げたそのコンセプトデザインがこちらです!!

コンセプトデザイン

国産クオーツクロノグラフムーブメントをベースに、機体からインスピレートされたフルチタンの外装には、回転計算尺とともに、脈拍計測が可能なパルスメーターも搭載されました。青く縁取られたガラスはT-4のキャノピーを表し、その内側の盤面は実際のコックピットを再現したデザインとなっています。クロノグラフのサブダイヤルには、12時に姿勢指示器と9時に高度計をモチーフとしたデザインがあしらわれ、飛行の要となる航空計器が再現されました。
また、コックピット全体のメカニックな臨場感を再現するために、文字盤全体が半透明で機械が透けて見える「トランスルーセントダイヤル」を本モデルで初めて開発します。

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姿勢指示器と高度計が文字盤に再現される

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青く縁取られたT-4ブルーのキャノピー

青く縁取られたT-4ブルーのキャノピー
(画像:航空幕僚監部提供)

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また、文字盤上のインデックス(目盛り)は、60周年を迎えるブルーインパルスへのリスペクトに満ちたスペシャルデザインとなっています。

1時から6時までのインデックスは、T-4ブルーの尾翼に塗装された機体番号を表し、実機の書体そのままに6番機まで忠実に再現されています。

ここで注目していただきたいのが、数字の「5」だけが逆さまになっている点です。 間違い!?ではなく、これにはブルーインパルスならではの深い理由があるのですが、答えが分かる方はブルーファンの上級レベルです。

実は6機編成のブルーインパルスのうち、リードソロである5番機パイロットのヘルメットの数字だけ、「5が逆さま」に描かれているというのがその理由です。もともと背面飛行の多い5番機なので、観客からも分かりやすいようにヘルメットの数字を5だけ逆さにしてしまえという隊員のサービス精神?からスタートした取り組みらしいのですが、今では5番機にだけ与えられた伝統的な勲章となっています。

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リードソロの勲章である“逆さの5”が文字盤のインデックスで表現されている

ちなみに、ブルーインパルスのパイロットに任命されると、1年目のTR(訓練待機)隊員では、まだヘルメットの数字は逆さまにならず、2年目のOR(任務待機)隊員となって初めて5が逆さまになるのです。
つまり5番機パイロットとなり、そしてそのアクロバットをマスターした者にだけ許された称号こそが“逆さの5”なのです。
そんなブルーインパルスならではのリードソロへのリスペクトを、私たちもしっかり時計の盤面で表現しています。

そして話をインデックスに戻すと、7時から12時に記されたアロー(矢印)マークは、6機のブルーインパルスを機番とは違った形で表現しています。
これは、現在のブルーインパルスの部隊インシグニア(紋章)に黄色で描かれている、6機のアローをモチーフとしています。

このコンセプト自体は前作からの踏襲となりますが、本モデルではトランスルーセントダイヤルの透かし感を最大限に高めるために、中抜きのアロー形状へと進化を遂げました。

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7時から12時のインデックスは、インシグニアに描かれた6機のアローがモチーフとなっている

暗所で光るブルー蓄光イメージ

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さらにインデックスと針には、ブルーに光る蓄光塗料が塗られ、暗所での視認性にも配慮がなされました。実用性はもちろん、6機のブルーが暗がりで浮かび上がるさまは、本モデルならではの個性と魅力に溢れています。

6機のブルーインパルスが、機番とアローという形で見事に調和しながら12時間を表現するこのデザインは、6機が奏でるその華麗で独創的なアクロバット飛行そのものを表現したもので、私たちケンテックスが腕時計というプロダクトを通してブルーへ捧げる「創造への挑戦」でもあるのです。




■毎月訪れる、「ブルーweek」

ディテールへのこだわりは、文字盤デザインだけにとどまりません。
本モデルでは60周年を記念して、これまでになかったアナログウォッチならではのスペシャルギミックが搭載される予定です。

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スケッチ上の日付カレンダー窓にご注目ください。(4時と5時の間)なにやら普通のカレンダーとは違い、ブルーカラーの台形をバックに白抜き数字が書かれています。

そう、、、もうお分かりですね。
なんとカレンダーがT-4ブルーの垂直尾翼になっています!

そしてブルーインパルスが6機編成ということは、、、
もうお察しのとおり、31日間のカレンダーの中で、1日~6日にだけ特別にこのデザインがあしらわれているのです。

ブルーインパルス
1から6までがT-4ブルーの尾翼となっているスペシャルカレンダー

1から6までがT-4ブルーの尾翼となっているスペシャルカレンダー

つまりこの時計を着用すると、1ヶ月に1度必ず“ブルーウィーク”が腕元に出現するという、マニアックすぎる仕掛けがカレンダーに隠されています。

開発陣の深いブルーインパルス愛が高じて生み出されたアイデアでしたが、航空幕僚監部の寛大な協力もあって、本モデルへの採用が正式に決まりました。

僅か数ミリ四方というカレンダーのキャンバスに、回転角度も計算して6機の尾翼を正確に印刷するのは難儀を極めますが、ぜひとも実現させたいスペシャルギミックです。
実現すれば、腕時計としては世界初?かもしれません。

ちなみに、カレンダーディスクをよく見ると、何かおかしな点に気づきませんか?
一つだけ、あるはずの数字がないですね!??
実はこれもまた、ブルーインパルスにまつわるある理由があるのですが、どんどん長くなってしまうため次回の号で説明したいと思います。お楽しみに。

■60周年を飾るスペシャルケースバックデザイン

本モデルの締めにご紹介するのが、ケースバックのデザインです。
機体を彷彿させるチタン外装にキャノピーガラス、そしてコックピット文字盤とご紹介してまいりましたが、忘れてはならないのが、その機体に命を吹き込むパイロットに他なりません。
60周年モデルの裏蓋には、記念すべき60TH ANNIVERSARYの文字とともに、ブルーのパイロットがエッチングにより刻印されます。

パイロット
パイロット

そしてパイロットの外周には、エンジン始動から離陸にいたる編隊長機によるすべての無線指示が克明に刻まれます。
「Blue Impulse Start engines」から始まるこの無線指示は、初代ブルー時代から連綿と受け継がれてきたもので、ブルーの歴史そのものでもあります。

なお本モデルは、記念すべき60周年を迎える来年の西暦にちなんで、2020個の限定生産となる予定です。その証であるシリアル番号は、パイロット下部の最外周に、「●●●●-2020」という数字で刻まれる予定となっています。


ディテールの、またその先のディテールまでこだわり抜いたブルーインパルス60周年記モデルは、現在プロトタイプの製作段階にあります。そのお披露目は11月上旬ころとなる見込みですが、その前に、次回の第3話では、機械式バージョンの製品概要についてスケッチとともにお届けしてまいります。

こちらも、一生ものの腕時計にふさわしい、ブルーの歴史と魅力が余すところなく凝縮されたモデルとなっていますので、ぜひご期待ください!